海や空気、植物や動物など、世界はさまざまな要素によって形成されています。世界を形成するさまざま要素が互いに影響を与え合うことによって、いくつもの変化が生じているといえるでしょう。このような考え方は「自然哲学」と表すことができ、その1つに「五行思想」があります。
今回は、五行思想についてご紹介します。
五行思想とは、古代中国で起こった自然哲学の思想です。「万物は、木・火・土・金・水の5種類の元素から成る」という考え方であり、西洋の四元素説と比較されることも多くあります。それぞれの元素は密接につながっており、互いに影響を与え合うことによって自然や人間社会に変化をもたらしていると考えられています。
五行思想における5種類の元素は、色によって分類されています。木は青を、火は朱(紅・赤)を、土は黄を、金は白を、水は玄(黒)を意味します。また、季節も同じように5つに分けられ、木が春、火が夏、金が秋、水が冬を意味し、土は季節の変わり目を象徴します。
四季に対応する色と季節を組み合わせ、ライフサイクルを表す「青春・朱夏・白秋・玄冬」という言葉が生まれたとされています。青春という言葉は日常生活でも頻繁に使われ、中国で生まれた五行思想の考え方が日本でも深く浸透していることがわかります。
五行思想の「五」は5元素を表し、「行」はその字から連想されるように、動く、回る、作用する、といったことを表します。つまり「5元素は互いに影響を与え合い、それらの作用によって天地万物は変化し、循環していく」という考え方が、五行思想の根底にあります。そして、5元素の相互作用として主なものが「相生(そうじょう)」と「相克(そうこく)」といわれるものです。
五行相生とは、ある要素の助けとなり生かしていく関係を表します。木→火→土→金→水→木といった順に展開され、矢印の先の要素を強めていくため陽の関係といわれます。
木が燃えることで火が生み出され、火が燃えた後の灰が土に返り、土の中からは金属の元となる鉱物を得られます。金属は冷えることで水滴を生み出し、水が木を成長させます。
五行相克とは、ある要素を押さえつけ滅ぼしてしまう関係を表します。木→土→水→火→金→木という順で展開され、矢印の先の要素を弱めていくため陰の関係といわれます。
木は土から養分を吸い取り土地を痩せさせ、土は水の流れをせき止め、よどませます。水は火を消し、火は金属をとかし、刃物に変わる金属は木を傷つけ、切り倒します。
それぞれが表す関係を考えると、相生は良い組み合わせであるが相克は悪い組み合わせだ、と捉えがちです。しかし、相生だけが存在すれば良いわけではありません。相生の関係が一方を高め、強まり過ぎた一方を相克の関係が抑制します。2つの関係がバランス良く存在してこそ、物事がうまく成り立っているといえるでしょう。
人と人との関わりにおいても、同じことがいえるのではないでしょうか。例えば、あなたのことを深く理解する人がいるとします。あなたが辛いときにはそばにいて、相談に乗り、助言し、あなたを助けてくれる存在です。あなたとその人は、あなたを生かしてくれる「相生の関係」にあるのかもしれません。あなたはその人を大切にするはずです。
しかし誰にでも、馬が合わない人はいます。どうしても互いに理解し合うことができず、何かと衝突することがあります。あなたとその相手は、もしかしたら「相克の関係」にあるのかもしれません。しかし、相克だからといって相手を排除することは、あなたにとってマイナスとなるのではないでしょうか。
相克は、あくまでも行き過ぎを抑制する関係です。長所は時と場合によって悪い方に働くことがありますが、自分ではなかなか気付くことができません。あなたの長所が悪い方に働いたとき、あなたに小言を言う人がいたら、あなたが自分を見つめ直す良いきっかけとなるでしょう。
いかがでしたか?人間関係に悩んだとき、五行思想を思い返して少し捉え方を変えると、今まで良く思えなかったことがまた少し違って見えるかもしれません。ぜひ参考にしてください。